示談交渉を甘く考えてはいけない!
自動車事故に遭った場合、相手の保険会社と示談交渉をして、お互いの損害額を算出し、事故の解決をするのが一般的です。
最近では、弁護士費用特約の普及により、示談交渉から裁判に発展するケースも増えていると言われていますが、それでもそのようなケースは全体の1割もありません。
つまり、ほとんどの交通事故が、示談交渉で解決しているのです。
それほど示談交渉は重要なのですが、中には、何も知識がなく相手の保険会社の言うがままに示談交渉が進んでしまい、納得のいく賠償金を得られないケースもあります。
そのようなことにならないように、示談交渉についてしっかり理解しておく必要があります。
示談交渉はいつから始めるのか
まずは、示談交渉を始めるタイミングについて説明します。
死亡事故の場合
被害者が死亡した場合、示談交渉のタイミングは葬儀終了後です。
損害額の中には葬儀費用も含まれるので、葬儀が全て終わり、葬儀費用が明確になってから交渉をするのが基本となります。
ただ葬儀費用は、一旦遺族が負担してから保険会社に請求する場合と、葬儀会社が直接保険会社に請求する場合があります。葬儀会社によっては、保険会社からの直接払いを受け付けていない会社もありますので、事前に確認しましょう。
傷害事故の場合
①後遺障害が残らない場合
後遺障害が残らない傷害事故の場合、示談交渉の開始時期は治療終了後となります。
損害額は、治療費や休業日等を考慮して算出されるので、治療が終了しないと、具体的な損害額が算出できないのです。
賠償金を得られるのは、示談交渉終了後ですので、入院費用は一旦自分で負担する必要があることもあります。そのような場合に備えて、自動車保険に加入する際は、人身傷害保険を補償に付けておくと良いでしょう。
人身傷害保険は、示談交渉を待たずに保険金を受け取れます。また、医療機関によっては、保険会社からの医療費の直接払いが可能なので、窓口で医療費を負担する必要がない場合もあります。
参考記事 人身傷害保険と搭乗者傷害保険、どっちが必要なの?
いずれにせよ、まずは治療に専念してから、示談交渉を開始すると良いでしょう。
②後遺障害が残る場合
後遺障害が残る場合、まずは症状が固定(これ以上改善の見込みがない状態)してから、担当医に「後遺障害診断書」を作成してもらいます。それをもとに、加害者の保険会社に「後遺障害等級申請」を行います。
保険会社から申請の回答が来て、後遺障害等級(1〜14等級)が認められたら、示談交渉を開始します。後遺障害等級によって損害額が異なります。
以上が、示談交渉を始めるタイミングです。ただ、これはあくまで一般的なタイミングです。
もし事故にあった場合は、自身が落ち着いて示談交渉をできるタイミングで開始してください。焦って、不利な条件での示談交渉にならないようにご注意ください。
示談交渉の流れとコツ
示談交渉が開始されると、示談案を作成します。
示談案の作成をするには、「損害額の計算」をする必要があります。損害額は、次の費用を元に計算します(事故のケースによって算出される費用が異なります。)
【請求する費用項目の一覧】
死亡事故の場合 | 傷害事故の場合 |
---|---|
治療関係費 | |
看護料 | |
入院雑費 | |
休業損害 | |
傷害慰謝料 | |
滅失利益 | |
葬儀関係費用(原則150万円) | 通院交通費 |
死亡慰謝料 | 後遺障害慰謝料 |
損害額の計算には、診断書や後遺障害診断書、各種費用の請求書や領収書が必要となりますので、必ず保管しましょう。
損害額の計算が終われば、それらを元に加害者側に示談案の提示をします。
示談案を提示する場合は、次のことに気をつけましょう。
必ず書面で提示する■
示談交渉の相手は、相手の保険会社となる場合がほとんどですが、保険会社ではたくさんの示談案件を抱えています。口頭の場合、うまく伝わらない恐れもあります。
示談内容を正確に伝えるためにも、書面で示談案を提示しましょう。
また、示談案に対する返答には期限をつけましょう。期限をつけないと、いつまでたっても示談案に対する回答を得られない恐れもあります。示談案は、必ず書面で回答期限を明示しましょう。
損害額の計算は「裁判所・弁護士基準」で計算する
保険会社が損害額を計算する場合、保険会社の基準を用いて損害額の計算を行います。この基準、最低限の補償金額なのでちょっと低めです。裁判所や弁護士が損害額を算定する基準の方が、金額が高いので、出来ればそちらの基準で示談案を算出しましょう。
「裁判所・弁護士基準」で算定する場合、弁護士に示談案の作成を依頼するのが最も効率が良いのですが、ご自身で算定する場合は、図書館等にある裁判所の判例集等を参考に算定しましょう。
法外な損害額を算定するのはご法度ですが、可能な限り大きな損害額を算定して、示談案とすると良いでしょう。
余談ですが、損害額が自賠責保険の保険金額の範囲内の場合、保険会社はあっさりと保険金を出してくれます。自賠責保険は、保険料や保険金額等が法律にしばられた保険で、各社利益も損失も出ない仕組みで運営されています。
保険金を支払っても、保険会社は特に痛手がないので、自賠責保険の範囲内の保険金額はあっさり出してくれるんですね。ただ、自賠責保険は、最低限の補償金額なので十分じゃない場合がほとんどです。
示談交渉の成立。もし不満があるときは
示談案を提示して、相手側が示談案の内容を承諾すれば、示談交渉の成立です。示談案をすんなりと承諾してくれればいいのですが、損害額の減額交渉をしてくることも考えられます。
そのような場合、減額交渉に納得いかないのであれば、無理をして応じる必要はありません。
もしお互いに示談案に納得がいかずに、交渉が進まない場合は、第三者機関である交通事故紛争処理センターに相談したり、裁判を起こすという方法もあります。
ただ、裁判まで発展した場合、時間や費用がかかること、必ずしも被害者に有利な判決が出るとは限らないことを念頭においてくださいね。
示談案を承諾し、示談書を作成すると後戻りができません。やっぱり、もっと損害額が大きかったと思っても、一度示談書を交わしてしまうと、それ以上の金額を請求できなくなるので、焦らず・相手の言いなりにならずに、ご自身が納得いくまで示談交渉をしましょう。
筆者プロフィール 春美
保険会社にて商品開発業務の仕事をしてきました。結婚を機にいったん退職しますが、その後も自動車保険のコールセンターで勤務。
現在は子育て主婦をしながら、そのときの経験・知識をもとに皆さんに役立つ自動車保険サイトを作っています。
詳しい自己紹介はこちら
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